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一 括 講 読

投稿時間:10/04/20(Tue) 09:48
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:生命保険の原価
昔、荻原博子さんが「生命保険の原価」という本を書いて定期保険の付加保険料を計算して発表したときはこの掲示板でも話題になりました。
一昨年ライフネット生命がその販売する商品について付加保険料を開示し、それを「生命保険の原価の開示」と宣伝して以来、この「生命保険の原価」という言葉はさらに良く使われるようになってきているようです。
マスコミでも、あるいはネットでも、特に生命保険を得意とするファイナンシャルプランナーの人なんかによく話題にされるようです。
本来的に、アクチュアリーの専門領域の話なのにもかかわらず、アクチュアリーが何も言わずにいるのもどうかな、と思っていました。
このページでもおなじみ、旧名 征保大将軍、今はどちらかといえばDr.KENの名前で活躍中の角倉さんがご自身のブログでこのテーマで議論を起こし、それに対する他のブロガーさん(『快適らいふ』というブログの秋桜児さん)からのコメントで『アカラックスの坂本さんに聞いてみたら』と名指しでご指名いただいたようなので、チョット考えをまとめてみました。
結果は、10ページほどの作文になってしまいました。
この掲示板にそのまま載せるわけにいかないので、別ファイルの形にしました。
http://www.acalax.info/bbs/genka.pdf
ご意見お聞かせください。

なお、文中、ライフネット生命やその社長の出口さんが何度か(何度も)登場しますが、それは、この話題の火付け役であり、常に話題を提供し続けている会社・人なので、そうなってしまっただけのことで、私としては別段、ライフネット生命や出口さんを宣伝するつもりも非難する意図もありません。

投稿時間:10/04/24(Sat) 13:58
投稿者名:秋桜児
Eメール:
URL :http://ucosmos.blog95.fc2.com/
タイトル:Re: 生命保険の原価
初めて投稿いたします。坂本さんを「名指しでご指名」させていただいた秋桜児と申します。
http://www.acalax.info/bbs/genka.pdf
拝見いたしました。
わかりやすいご説明ありがとうございました。
2010年1月28日(木)に会社アカラックス主催のセミナーで話されたという「生命保険会社の原価」での講演内容と同じ内容だったのでしょうか。(Dr.KENさんはこのセミナーにご参加されたようですが、「原価」についてご理解してなかったようです。)

(1)営業保険料=純保険料+付加保険料とあらわされる。

(2)純保険料は、予定利率・予定死亡率(+医療関係の予定発生率)からなっている。「原価」ではない。
生命保険の「原価」とは、保険金や給付金の支払額のこと。
だから、ライフネット生命・出口社長が、純保険料のことを指して「原価」と言っているのは正しくない。

(3)付加保険料は、純保険料への「上乗せ」であり、営業保険料(売値)の一部を構成しているだけ。付加保険料は、会社の事業費に充てられる部分と代理店手数料に充てられる部分、会社の儲けになる部分から成り立っている。予定事業費とは必ずしも同じではない。

おおよそ、このような内容だったかと思います。

「純保険料」について言うと、
「原価」とは結果として計算されるものであるから、予め予定額として設定する「純保険料」を「原価」と言うのは正しくない、ということのようです。
であれば、純保険料を「予定原価」あるいは「見込み原価」と表現すれば、より近い意味になるでしょうか。
保険会社も商売ですから、闇雲に営業保険料を設定しているわけではなく、凡その「見込み原価」を把握する必要があることでしょう。

私をはじめ一般の消費者は、アクチュアリーのような保険の専門家を目指しているわけではありません。
多くの一般消費者が保険の説明に求めるのは、概ね誤りではない、消費者の購入判断を誤らせない、わかりやすい説明だと思います。
ライフネット生命・出口社長の説明は、私たち一般消費者が理解しやすい言葉を使ったという意味で、意義あることだと思います。
(もちろん、坂本さんの10ページにも及ぶご説明もわかりやすいものでしたが)

また、出口社長が保険料の内訳に「原価」という言葉を使ったことで、保険商品というのは、CMで流れているような「愛」などはなく、
また、保険会社は「一人は皆のために、皆は一人のために」を体現している組織でもないということがわかったのではないでしょうか。
保険商品は、保険会社の単なる"儲けのタネ"に過ぎないと言うことが、「原価」と言う言葉を使うことによってわかってもらえるのではないかと思います。

保険営業員が消費者の無知を利用して保険商品のお得感を強調したり、情緒的な説明で保険加入を勧めるほうが、出口社長の説明よりももっと罪深いと思っています。
保険営業員のウソの方がもっと罪深いと思うのは私だけでしょうか。

コメントがだいぶ長くなってしまいました。付加保険料についても書こうと思いましたが、別の機会に譲ります。
失礼いたしました。

投稿時間:10/05/23(Sun) 20:16
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:No 3503の秋桜児さんのコメントについて
秋桜児さん、またまたコメントありがとうございます。

> 機会があれば、坂本さんのセミナーに参加するなどして直接お話ししてみたいとも思います。

=>> ぜひ、ご参加ください。その後の懇親会にも参加していただけるとKENさんの何たるかももっとよくわかっていただけると思います。

> −一般消費者が「純保険料」を「原価のようなもの」と考えても大勢に影響はない。

=>>大勢に影響ないかどうかわかりませんが、どうしてもそうしたい、というのであれば反対はしません。

> −一般消費者が、「付加保険料」を「保険会社の手数料(として見込む額)」と考えても大勢に影響はない。

=>>大勢に影響ないかどうかわかりませんが、どうしてもそうしたい、というのであれば反対はしません。

> −保険会社にとって、一般的に「純保険料」、「付加保険料」を知られることは都合が悪い。

=>>都合が悪いかどうかはわかりませんが、誤解のない様に説明するのはけっこう厄介なことだと考えていると思います。

> −保険営業員は、「保険プロ」などと自称している人でさえ、保険を知っている人とは限らない。(彼らは保険を売ることが商売であって、保険を知ること・知ってもらうことを商売にしているわけではないからであろうと推測します。)

=>>残念ながら、保険会社のほうもあまりきちんとした教育をしているわけではありませんし、自分で勉強して、というのもかなりハードルが高いかもしれません。

> 【2】坂本さんは、アクチュアリーという専門家であると同時に、ご自身が保険販売者でもあるという立場で発言している、という印象も持っています。

=>>保険の代理店をすることにより、今までより保険の現場についての理解がかなり充実したと思っています。

> 坂本さんがお書きになった『生命保険「入って得する人、損する人」』を読みました。

=>>ありがとうございます。もっとたくさんの人に読んでもらえるとうれしいのですが。

> 坂本さんの本は、漢字系生保の商品に関する注意点は書いていますが、カタカナ系・損保系生保の商品に関する注意点は明示的に書いていません。むしろ、損保系生保の商品を好意的に書いたりしています。
> 坂本さんご自身が、保険販売者(漢字系生保以外)としての立場を重視している表れかと感じた次第です。
> あくまでも私の受けた印象ですが、アドバイザーとしてのお二人を相対的に見れば、坂本さんは「保険会社寄り」、後田さんは「消費者寄り」であると感じました。

=>>感想ありがとうございます。保険販売者としては殆ど保険の募集をすることができない代理店ですので、保険販売者としての立場を重視している、とは思っていません。
=>>「保険会社寄り」と思われたのは、これまでの経験から保険会社の立場もわかるので、それも解説しよう、としている所をそのように思われるのかもしれませんね。私自身は保険会社からはかなり嫌われているのではないかと思っています。

> 「教えて!goo」というQAサイトの中に、日本生命OB(保険販売の立場を退いた人)から「保険に入る必要が無い人というのがいる。全部解約しなさい。」という忠告を受けたという話が載っていました。
> ( http://oshiete.goo.ne.jp/qa/5877574.html 「ty470620さん」の回答)
>
> 後田さんならこの日本生命OBの方と同じ発言をするかもしれませんが、現在の坂本さんはこのような発言は決してなさらないのではないかと想像しています。

=>>確かにそのとおりですね。保険に入るも入らないもその人の自由な選択ですから、「全部解約しなさい。」などというえらそうなことは言わないと思います。「全部解約しても大丈夫かもしれません。」くらいは言うかも知れませんが。

> 【3】以上、長々と勝手なことを書きました。今後も興味あるレスがあれば、お邪魔したいと思います。
> ありがとうございました。

=>>こちらこそ、ありがとうございました。おかげさまでこの掲示板がめずらしくにぎやかになりました。
また何か面白そうなテーマがありましたら是非投稿ください。

投稿時間:10/05/23(Sun) 19:35
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:No 3501の通りすがりさんのコメントについて
通りすがりさん、またコメントありがとうございます。

> Dr.KEN氏と違って、一応は分別のあるお方のようですね。
> (上から目線ですみません)

このように評価していただき、ありがとうございます。
でも、KENさんはチョット興奮しやすい所もありますが、私よりよっぽども分別がある人だと思います。


> 坂本さん自身が勘違いをする可能性はどう思っておられますか?

もちろん私が勘違いする可能性は非常に高いと思っています。特にこのごろは「よる年波」で間違いが多いことは自覚しています。
このような掲示板を使って間違いを指摘していただくことはとてもありがたいことだと思っています。


> アクチュアリーのコメントが皆に勘違いを喚起するとか、
> アクチュアリーの言うことも時としてそのアクチュアリー自身が勘違いしてその勘違いを確信しているため、非常に説得力のある勘違い増幅器になっている、
>
> というようなケースはないのでしょうか?

アクチュアリーは優秀な人が多いので、その分どちらかといえば自分の勘違いを確信して変えようとしない、という所はあるかもしれません。でも、アクチュアリーの言うことを聞いてみようなんて人はあんまりいませんし、アクチュアリーのほうも大勢の人に何かを主張しようなどと考える人はあまりいませんので、「非常に説得力のある勘違い増幅器」になる恐れはあまり高くないと思います。
私自身はアクチュアリーの中でもほとんど影響力のない存在ですから、「非常に説得力のある勘違い増幅器」になる恐れは残念ながらほとんどないものと考えています。

投稿時間:10/05/17(Mon) 21:32
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:Re^2: 生命保険の原価
秋桜児様、

再度のコメントありがとうございます。

純保険料という概念は生命保険会社にとっては重要なものです。さまざまな経営分析や会計管理に関してさまざまな純保険料が使われています。だからといって純保険料が原価だ、というわけではありませんが。
原価というのは売り手がその利益を管理する、即ち利益はどのように生み出されたんだろう、ということを理解するために使われるものであって、買い手が気にするのは売り手の原価ではなく、売値のほうです。

たとえばトヨタ自動車が原価100万円の車を300万円で売っているとしましょう。あるベンチャー企業が同じような車を作って売ろうとして、ようやく200万円の原価をかけて似たようなものができたとします。見た目は同じようなものですが、中身をしっかり見比べてみるとやはりかなり質の劣るものしかできなかったとします。質の悪いものを高く売ろうとしても売れるわけはないので、ここは歯を食いしばって280万円で売ることにしたとします。
買い手からみて、この両社の原価を知ることにどれだけの意味があるのでしょうか。
原価が安くて質の高いもののほうが、原価が高くて質の劣るものより、良いということじゃないでしょうか。質の悪いものを何とかして売ろうとして、原価に対する上乗せ幅をトコトン削って何とか値段を下げたところで、質の悪さを改善できたわけではないのですから、あまり意味のないことかもしれません。

生命保険会社でも、同じ予定死亡率を使っていたとしても、実際に死亡が起こったときに、その状況をトコトン調べて、何とかして保険金を払わないで済まそうとする会社と、よっぽどおかしい状況でない限り四の五の言わずにさっさと保険金を払ってしまおうとする会社とでは、保険金支払の原価はかなり違ったものになるでしょう。保険料が同じだとすると原価の高い保険会社のほうが、消費者にとっては得になります。

「予算としての原価」という言葉はよくわかりませんが、原価の予算、というのは一般に使われているものだと思います。「この製品の製造原価は1個当たり100円に抑えろ」、などという具合です。生命保険会社でも、たとえば「今年の死亡保険金の支払は予定死亡率で計算される額の80%以下にしろ」などという具合になります。原価計算というのは経営管理のためのものですから、原価に目標(あるいは予算)を設定して管理するのはごく当たり前のことです。
生命保険会社でも予算管理、原価管理の重要性は言うまでもありません。ただし、ここで純保険料は原価ではない、というだけのことです。

前回のコメントで賭け事の例でなく、投資目的で株を買うというケースで考えたらどうか、といったのは、別にその場合に原価がどうなるか、ということではなく、ものの売り買いには必ずしも原価などというものが存在しないこともある、ということを言いたかったのです。
宝くじの配当が50%以下だ、ということがわかっていても年末ジャンボには行列ができますし、その配当率を30%に下げたとしても買う人は大勢いるでしょう。配当率を買っているわけではなく夢を買っているんですから。
保険会社は商売で保険を売っているんですから賭けをしているわけではありません。そのため、原価がちゃんと計算できるような仕組みになっているわけです。それを保証するのが「大数の法則」というものです。賭けをしないで保険を提供できる仕組みを作ったことによって保険が商売として成り立つようになったのです。
保険に入るほうはそんなわけには行きません。何回も死んでみて期待値を取る、なんてわけには行きませんから。
大勢の人の死亡については確率の計算を使うことはできますが、特定の人の死亡については確率が使えるなどという保証はどこにもありません。たとえば40歳の人の死亡率、というのは40歳の大勢の人の全体としての死亡率、ということであって、40歳の特定の人の個別の死亡率ではありません。たぶん、特定の人の場合、死亡率などというものはないんだと思います。

「顧客の勘違いを利用して売っている」ということであれば、それは保険に限らず、ありとあらゆるものに該当するんではないでしょうか。テレビのコマーシャルなどは典型的に「顧客の勘違い」を膨らませるためのものですし、いわゆる評論家などという人のコメントも皆に勘違いを喚起するために報道されることが多いし、学者の先生の言うことも時としてその先生自身が勘違いしてその勘違いを確信しているため、非常に説得力のある勘違い増幅器になっている、というケースを良く見かけます。
保険の営業を特別視する必要はないんではないでしょうか。

投稿時間:10/05/22(Sat) 16:29
投稿者名:秋桜児
Eメール:
URL :http://ucosmos.blog95.fc2.com/
タイトル:Re^3: 生命保険の原価

「保険の原価」とは何かについて教えていただき、また、何度にもわたる私のコメントにお付き合いくださり有難うございました。

「違うんだってば!」と感じる生命保険関係者が多い中、
専門知識に裏打ちされた良識あるご回答をいただいたお陰で、楽しくコメントをさせていただきました。
機会があれば、坂本さんのセミナーに参加するなどして直接お話ししてみたいとも思います。

【1】「保険の原価」に関する一連のレスの中で、いくつか勉強させていただきました。
−営業保険料=純保険料+付加保険料 である。
−専門家の立場から厳密に言えば、「純保険料」は「保険の原価」ではない。また、「付加保険料」は「予定事業費」でもない。
−一般消費者が「純保険料」を「原価のようなもの」と考えても大勢に影響はない。
−一般消費者が、「付加保険料」を「保険会社の手数料(として見込む額)」と考えても大勢に影響はない。
−保険会社にとって、一般的に「純保険料」、「付加保険料」を知られることは都合が悪い。
−保険営業員は、「保険プロ」などと自称している人でさえ、保険を知っている人とは限らない。(彼らは保険を売ることが商売であって、保険を知ること・知ってもらうことを商売にしているわけではないからであろうと推測します。)

【2】坂本さんは、アクチュアリーという専門家であると同時に、ご自身が保険販売者でもあるという立場で発言している、という印象も持っています。

坂本さんがお書きになった『生命保険「入って得する人、損する人」』を読みました。
同時期に、後田亨さんと言う方が書いた『生命保険のウラ側』という本も読みました。
両書とも、生命保険に入るときに気をつけることが書かれています。
坂本さんの本は、漢字系生保の商品に関する注意点は書いていますが、カタカナ系・損保系生保の商品に関する注意点は明示的に書いていません。むしろ、損保系生保の商品を好意的に書いたりしています。
一方、後田さんの本には、どの生保の商品かを問わず、注意点が書かれています。

坂本さんご自身が、保険販売者(漢字系生保以外)としての立場を重視している表れかと感じた次第です。
あくまでも私の受けた印象ですが、アドバイザーとしてのお二人を相対的に見れば、坂本さんは「保険会社寄り」、後田さんは「消費者寄り」であると感じました。


「教えて!goo」というQAサイトの中に、日本生命OB(保険販売の立場を退いた人)から「保険に入る必要が無い人というのがいる。全部解約しなさい。」という忠告を受けたという話が載っていました。
( http://oshiete.goo.ne.jp/qa/5877574.html 「ty470620さん」の回答)

後田さんならこの日本生命OBの方と同じ発言をするかもしれませんが、現在の坂本さんはこのような発言は決してなさらないのではないかと想像しています。

坂本さんの、アクチュアリーという立場、保険販売者としての立場、両方が「保険の原価」に関する一連のレスにも散りばめられていると感じた次第です。

【3】以上、長々と勝手なことを書きました。今後も興味あるレスがあれば、お邪魔したいと思います。
ありがとうございました。

投稿時間:10/05/19(Wed) 20:01
投稿者名:通りすがり
Eメール:
URL :
タイトル:Re^3: 生命保険の原価
横レスで申し訳ないのですが、気になったのでレスさせて頂きます。

>>「顧客の勘違いを利用して売っている」ということであれば、それは保険に限らず、ありとあらゆるものに該当するんではないでしょうか。

坂本嘉輝さん自身は、ここでいう「ありとあらゆるものに該当」しますか?しませんか?

投稿時間:10/05/20(Thu) 09:08
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:Re^4: 生命保険の原価
通りすがりさん、
するどい突っ込みですね。

もちろん、私自身も「ありとあらゆるものに該当」します。

原則として意図的に「顧客の勘違いを利用しよう」とは思っていませんが、ありとあらゆることを説明して、相手が勘違いしていることが何もないことを確認して、などということは現実的に不可能ですから、相手が勘違いしてこちらのサービスを買ってくれることはないとはいえません。

私は神様でも魔法使いでもありませんが、私に頼めば何でも実現する、などと信じて仕事を依頼してくれる人もいます。そんなことはない、と説明はしますが、頼まれた仕事はきちんとやります。どうしてもできないことはできないことを説明します。それでも相手の勘違いを完全に排除することは不可能です。

あとで相手が「勘違いを利用して買わされた」といってくる可能性は排除できません。
そういう意味で私自身も「顧客の勘違いを利用して売っている」ということに該当することになるのでしょうね。

投稿時間:10/05/21(Fri) 01:49
投稿者名:通りすがり
Eメール:
URL :
タイトル:Re^5: 生命保険の原価
レスありがとうございます。

Dr.KEN氏と違って、一応は分別のあるお方のようですね。
(上から目線ですみません)


No.3500のレスを要約しますと、

1.意図的に「顧客の勘違いを利用しよう」とは思っていない
2.相手(顧客)が勘違いする可能性は排除できない

という主旨になるかと思います。


では、

>>評論家などという人のコメントも皆に勘違いを喚起するために報道されることが多いし、学者の先生の言うことも時としてその先生自身が勘違いしてその勘違いを確信しているため、非常に説得力のある勘違い増幅器になっている、というケースを良く見かけます。

について、

坂本さん自身が勘違いをする可能性はどう思っておられますか?


上の説明を用いるならば、

アクチュアリーのコメントが皆に勘違いを喚起するとか、
アクチュアリーの言うことも時としてそのアクチュアリー自身が勘違いしてその勘違いを確信しているため、非常に説得力のある勘違い増幅器になっている、

というようなケースはないのでしょうか?

投稿時間:10/05/21(Fri) 07:53
投稿者名:一消費者
Eメール:
URL :
タイトル:Re^6: 生命保険の原価
かんちがいとひとくくりにされているなかには、夢を買う、安心を買うというのも含まれます。また、生保加入者がよくいわれる、お守りを買うというのもふくまれます。これは勘違いといえばそうかもしれませんが、経済の成熟した社会における消費者のニーズだともいえます。また、生保だと、正しくそのニーズを理解するのが難しいので、そういう理解をさせることは、むしろ社会的にもおこなわれるべきとすらいえるかもしれません。勘違いという言葉に込められた意味を理解することが肝要です。

投稿時間:10/05/11(Tue) 10:45
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:Re^2: 生命保険の原価
秋桜児様、

またまたコメントありがとうございます。
チョット遅れてしまいましたが、返答させていただきます。

T.日本の生命保険会社の利益の源泉は圧倒的に死差益−の部分について

> しかし、保険会社が営業保険料を決めるときには、「いわゆる原価」の金額を基礎としているのでしょうから、

の所ですが、やはり、営業保険料を決めるときの基準になるのは営業保険料自体で、純保険料ではありません。
「生命保険の原価」でも書きましたが、純保険料自体、さまざまな純保険料がありますが、それはさまざまな目的によって使い分けられるものです。営業保険料のほうは契約による約定価格ですから固定しており、確定しています。保険会社の収益を決めるのは営業保険料であって純保険料ではありません。

KENさんのブログの5月5日分にactuary_mathさんがコメントしているいわき(s_iwk)さんの「ウソグラフと生命保険の原価」という記事をごらんだと思いますが、営業保険料自体を比較するのでなく、その一部を差し引いた形で比較すると差が過大に評価されることになります。秋桜児さんの、付加保険料率に計算しなおして比較するのはまた別の比較になりますが。

いずれにしても、「いわゆる」にしても「のようなもの」にしても、言う方、あるいは書くほうがそのような言葉を付け加えたとしても聞くほう、あるいは読むほうはそんな言葉を気にしたりしませんからほとんど意味がありません。出口さんにしても岩瀬さんにしても平気で「いわゆる」も「のようなもの」もつけないで発言しているくらいですから、センセーショナリズムのマスコミはなおさら「いわゆる」とか「のようなもの」とかのまだるっこしい言葉は使いません。秋桜児さんが「いわゆる」や「のようなもの」をつけて書いたとしても、読者がそこに気をつけて読んでくれることはあまり期待できないのではないかと思います。

> 賭け事に例えてみると、

の部分について、確かに保険は賭け事に似た所はありますが、この場合はなかなか比較は難しいのではないでしょうか。「胴元の取り分」がどれくらいになるか、胴元にもわからないですし、さらに「賭けに参加した人(保険契約者)に分配される分」がどれくらいのものになるかはなおさらわからないですから。

たとえば第一生命の株を投資目的で1株15万円で買うとして、「胴元の取り分」と「賭けに参加した人(買った人)に分配される分(として最大限見込んでいる分)」がどうなるか、というたとえで考えるとどうなるでしょう。


U.保険営業員−について

> ある保険専門家の方が言っていました。「保険は顧客の勘違いを利用して売っている」と。

確かに顧客の勘違いもあると思いますが、それだけではないと思います。
もしその人が保険というのはすべて顧客の勘違いで売られている、と考えているのであれば、私はその人を保険の専門家とは思いません。

勘違いといえば、ライフネットの出口さんは生命保険は理解して入ることが大切だ、といって、「比較して、納得して、購入する」といっていますが、うかうか読んでしまうと比較することが理解することだ、と勘違いしてしまうかもしれません。こんなのも「顧客の勘違いを利用して売っている」の中に入るのでしょうか。

> 消費者が考える"玉"の営業員に高い手数料が払われるわけではない。

の営業員を保険会社にいいなおすと、

消費者が考える"玉"の保険会社が儲かるわけではない。

ということになるのでしょうか。
消費者のためになるかどうかと手数料が高いかどうかということは別の問題じゃないでしょうか。
とはいえ、KENさんは手数料をどんどん減らされているようですが。

投稿時間:10/05/12(Wed) 22:49
投稿者名:秋桜児
Eメール:
URL :http://ucosmos.blog95.fc2.com/
タイトル:Re^3: 生命保険の原価
坂本 様

丁寧なご返事有難うございます。

−保険の原価
結果としての収益がいくらになるかは別として、保険会社がある保険商品の営業保険料を決めるとき、純保険料は概ねこのくらいだから、付加保険料をこのくらい上乗せして、この商品での利益をこのくらい見込もう、と考えることでしょう。
もちろん、販売目標件数も見込んだ上で。
であれば、「純保険料」は営業保険料を決める上での「基礎」になるということです。

ということは、純保険料は「予算としての原価」あるいは「原価のようなもの」と言えそうです。

車などの製造メーカーでも、このくらいまで「予算としての原価」を切り詰めて、このくらいの販売価格で売ろう。目標販売台数はこのくらい。そうすれば、予想利益がこのくらい、
と見込みを立てることでしょう。
しかし、結果としてどうなるかは別問題です。
だからといって「予算としての原価」を見積もることが無意味ということでは有りません。

−賭け事の例え
株を例えにするのは如何でしょう?
株を発行した会社は、それを売却した時点で入ってくる資金額が決まります。
投資する人にとって、儲かるかどうかは神のみぞ知ることです。
株価は神様しか予測できません。

(ただし、売買を仲介する証券会社の取り分はハッキリしています。)

保険商品は、株価ほどは不確実なものではないでしょう。ある程度予想が立つのですから。
保険会社は、契約者と「負けないと見込む賭け」をしています。

−保険は顧客の勘違いを利用して売っている
全ての保険営業員とは言いませんが、形が見えないことを良いことに、顧客の勘違いを利用しようとしているのでは?

投稿時間:10/05/03(Mon) 12:28
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:Re^2: 生命保険の原価
秋桜児様、

コメントありがとうございます。

T.「付加保険料」についての私の理解−−について

> このことは、「付加保険料」には、生命保険会社ごとの「戦略」が含まれているものだと理解しました。

というより、むしろ、「営業保険料」に、ということだと思います。

さらに、保険料率、というより保険料額、ということだと思います。
日本生命のように、できるだけ高額の保険契約に取扱を制限して1件あたりの単価を高くしよう、という戦略と、保険料は少額の契約を多件数獲得することにより全体的な収益確保を目指すアフラックの戦略、などという具合です。

とはいえ純保険料にしても付加保険料にしても保険会社にはそれほどの自由度がないのでむしろ商品戦略ゃマーケティング戦略で勝負している、という所だと思います。

> 坂本さんがお書きになった、『生命保険「入って得する人、損する人」』は読ませていただいていました。
> 『「生命保険は助け合い」というのは迷信です』と書かれた部分も読みました。

ありがとうございます。

> 保険営業員の多くも、『「生命保険は助け合い」というのは迷信です』ということを知っていながら、顧客に対しては、「愛」だの「助け合い」だのという「迷信」を伝えているのでしょう。
> 保険商品は、単なる「商売のタネ」に過ぎないのに。

残念ながら保険営業員も、また彼らを指導・教育する保険会社の社員も、さらには保険会社自体もまだ「生命保険は助け合い」という迷信を信じこんでいます。普通の感覚では信じがたいことだと思いますが、戦後の生命保険の相互会社中心の考え方はそれほど根強く、『生命保険会社は儲けてはいけない』という迷信もまだまだ根強いものがあります。
私がいろいろ書いているのも、そのような異常な状態を少しでも解消し、生命保険も普通の商売のひとつだ、ということを多くの人(アクチュアリーも含みますが、アクチュアリーは真面目で特に頭が固い人が多いのでなかなかわかってもらうのは難しいことですが)に理解してもらいたい、という思いからです。
日本の生命保険会社の利益の源泉は圧倒的に死差益です。即ち、「いわゆる原価」の部分が本当の原価より割高になっている部分です。付加保険料の部分で儲けているわけではありません。にもかかわらずその部分を「原価」と表現してしまうことによって生命保険会社の収益構造がかえってわかりにくくなってしまうのではないか、と思います。


U.『保険商品ではなぜ「原価」を気にするのか』に対する私の理解−について

確かに保険の効能はわかりにくいと思います。
死亡保険を受け取るとき、それは保険の効能、というより、あらかじめ保険に入っておいた自分の賢明さの結果だ、と思われるでしょうし、保険金を受け取らずに保険期間が終了したとき、保険金を受け取るようなことにならなくて良かった、と思うより、大金を無駄にしてしまった、と思われることが多いでしょうから。

> 当ブログ・付加保険料比較
> http://ucosmos.blog95.fc2.com/blog-entry-284.html

付加保険料の比較で、純保険料を同じとして営業保険料からその純保険料を差し引いて付加保険料を計算し、それを比較する、というのも確かに比較のひとつの方法だ、と思います。
ただし、純保険料も会社間・商品間で必ずしも同じ、というわけではありません。

秋桜児さんの表では定期保険の保険期間10年という生命保険としては短期の商品だけを取り上げていますので、予定利率の影響はそれほど大きくはないと思いますが、予定死亡率の違いは特に高年齢になると無視できない水準になるのではないかと思います(全体的な傾向を変えるほどではありませんが)。
現在、標準となる死亡率は通常(有配当・保険年齢)といわれるもので、これに対し、有配当を無配当としたベース、保険年齢を満年齢としたベースがあります。大小関係は
(有配当死亡率)>(無配当死亡率)
(保険年齢ベース死亡率)<(満年齢ベース死亡率)
となっています。
ここで、予定死亡率の有配当・無配当と商品の有配当・無配当とは必ずしも連動しません。いわゆる準有配当という、5年毎利差配当付き、などの商品は死亡率は無配当用のものを使っています。
保険年齢ベースと満年齢ベースは契約年齢の計算方式の違いで、たとえば保険年齢ベースであれば29.5歳から30.5歳の直前までの年齢を30歳としてカウントし、満年齢ベースでは30.0歳から31.0歳の直前までの年齢を30歳としてカウントしていますので、平均して0.5歳分の死亡率の差があります。

> 保険営業員のうち、会社や自分の役に立つ営業をしようと考えている営業員は多いでしょうが、顧客の役に立つ営業をしようと考えている営業員はどれほどいるのでしょうか?

保険営業員は、もちろん自分の収入のことも考えているでしょうが、そのうちほとんどの人は所属する保険会社から与えられた情報と取扱範囲の制限の中でできるだけ顧客の役に立つ営業をしようと考えているものと思います。保険会社の社員も与えられた情報の範囲内でできるだけ自社の商品が顧客にとってメリットがある部分を見つけ出して保険営業員を教育しているものと思います。保険会社と保険営業員がぐるになって顧客の犠牲のもとに自分たちの利益のみを追求しているとしたら、そのような商売は何十年も持たないと思います。

もちろん各社の保険料を徹底的に比較してできるだけ安い商品を選択する、という保険の入り方もあると思いますが、保険加入の多くはそのような考慮とは別の事情で行なわれているのではないかと思います。

投稿時間:10/05/06(Thu) 19:38
投稿者名:秋桜児
Eメール:
URL :http://ucosmos.blog95.fc2.com/
タイトル:Re^3: 生命保険の原価
坂本様

私の勝手なコメントに対して、丁寧なお返事をいただき有難うございます。
坂本さんが書かれた10枚のレポート、それに今回までのやりとりで良い勉強をさせていただきました。有難うございました。

T.日本の生命保険会社の利益の源泉は圧倒的に死差益

坂本さんがおっしゃるとおり、死差益からの収益が大きいことは、「いわゆる原価」の部分が(結果としての)本当の原価より割高になっているということですので、厳密に言うとおかしいかもしれません。
しかし、保険会社が営業保険料を決めるときには、「いわゆる原価」の金額を基礎としているのでしょうから、
「多少儲けがでるかもしれませんが、「純保険料(予定利率+予定死亡率)」を「いわゆる原価」と呼んでいます。」としても、目くじらを立てるほど大きな間違いだとも思えません。
まして、一般の人たちに向けた説明の中で、純保険料を「原価のようなもの」と言ったとしても、許容される範囲ではないでしょうか。

試みに、付加保険料、純保険料を別の言葉に置き換えてみます。
賭け事に例えてみると、賭け金(掛け金)のうち、
付加保険料が「胴元(保険会社)の取り分(として見込んでいる分)」
であり、
純保険料が「賭けに参加した人(保険契約者)に分配される分(として最大限見込んでいる分)」
と言えるでしょうか。

宝くじや競馬などは、胴元の取り分がハッキリしています。生命保険でも「胴元の取り分」をハッキリさせて、賭け(保険契約)に参加してもらったほうがフェアと言えないでしょうか。
「胴元の取り分はこれだけあるけど、それでよければこの賭け(保険契約)に参加して」と言うことができます。

この言い換えの方が、純保険料、付加保険料を開示してもらう意義がよりハッキリするでしょうか。

U.保険営業員

「ほとんどの人は所属する保険会社から与えられた情報と取扱範囲の制限の中でできるだけ顧客の役に立つ営業をしようと考えているもの」
という言葉を私は信じません。
ある保険専門家の方が言っていました。「保険は顧客の勘違いを利用して売っている」と。

私自身は、保険営業員の中にもすばらしい考えを持った人も知っています。
保険営業員は、玉石混交なのだと思います。しかも圧倒的に"玉"が少ないと想像しています。
消費者が考える"玉"と保険会社が考える"玉"が違う。
消費者が考える"玉"の営業員に高い手数料が払われるわけではない。
だから、消費者にとっての"玉"の営業員が増えていかないのだと思います。

投稿時間:10/04/25(Sun) 20:14
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:Re^2: 生命保険の原価
秋桜児様、

はじめまして。こちらからご挨拶しようとしていたのですが、先を越されてしまいました。

『生命保険の原価』お読みいただきありがとうございます。

「名指しでご指名」していただいたおかげで長年の課題であった『生命保険の原価』について考えを整理することができました。その過程で非常にいい勉強ができました。ありがとうございます。

2010年1月28日(木)のアカラックスセミナーの「生命保険会社の原価」の内容は『生命保険の原価』とは別のものです。「生命保険会社の原価」のほうはタイトルのとおり、生命保険会社の原価計算をして売上高=収入保険料に対する売上原価をどのようにして計算するか、それらの差である売上総利益あるいは粗利をどのように計算するか、そして粗利益率を計算してみる、というものです。あるいはチョット特殊な形をしている生命保険会社の損益計算書を一般の会社の損益計算書の形に変換してみるとどうなるか、というものです。会社の全体の原価をテーマにしたもので、契約個別の原価について考えたものではありません。

もしDr.KENさんがそのセミナーで説明した原価についてよく理解できなかったとしたら、それはKENさんのせいではなく、セミナーで解説した私の説明が不十分だった、ということだと思います。

秋桜児さんの
純保険料を「予定原価」あるいは「見込み原価」と表現すれば、より近い意味になるでしょうか。

という部分について、そのような表現方法も可能だと思いますが、たとえばライフネット生命などの場合、まだ経過の浅い契約が多いので保険金や給付金の支払は純保険料で十分まかなえていると思いますが、事業費は付加保険料ではとてもまかなえない状態になっています。即ち純保険料は事業費をまかなうためにも使われる、ということです。要は、純保険料と付加保険料の合計の営業保険料で保険金や給付金の支払をし、事業費をまかない、利益をあげる、というように理解したほうがいいと思います。

秋桜児さんの
保険会社は「一人は皆のために、皆は一人のために」を体現している組織でもない

ということについては、私の書いた『生命保険「入って得する人、損する人」』という本(講談社+α新書)には
「生命保険は助け合い」というのは迷信です。

と明確にしていますが、ライフネットの出口社長の著書では
「生命保険は助け合い」
というのが基本となっています。

もしよろしかったら『生命保険「入って得する人、損する人」』も読んでみてください。

私にとって不思議なのは、純保険料・付加保険料というのは保険会社の内部管理のために使うもので、消費者にとっては営業保険料自体が検討の対象にはずのものなのに、どうしてその営業保険料の一部である純保険料や付加保険料がそんなに取り上げられるのだろうか、ということです。

『保険営業員が消費者の無知を利用して保険商品のお得感を強調したり、情緒的な説明で保険加入を勧める』というのもあながち否定できないと思いますが、出口社長の説明も同じようにかなり情緒的で不正確だ、ということを理解していただけたら、と思っています。

付加保険料についてのコメントも楽しみにお待ちいたします。

投稿時間:10/04/29(Thu) 18:43
投稿者名:秋桜児
Eメール:
URL :http://ucosmos.blog95.fc2.com/blog-category-13.html
タイトル:Re^3: 生命保険の原価
付加保険料について、コメントさせていただきます。
長文失礼いたします。

T.「付加保険料」についての私の理解

・営業保険料=純保険料+付加保険料とあらわされる。
・付加保険料は、純保険料への「上乗せ」であり、営業保険料(売値)の一部を構成しているだけ。付加保険料は、会社の事業費に充てられる部分と代理店手数料に充てられる部分、会社の儲けになる部分から成り立っている。予定事業費とは必ずしも同じではない。

このことは、「付加保険料」には、生命保険会社ごとの「戦略」が含まれているものだと理解しました。

@定期保険商品で、新規保険加入世代である20歳代〜30歳代をメインターゲットにして、
この世代にインパクトのある安い保険料を提供しよう。他の世代にはインパクトが欠けてもよい。(割安感が薄れてもよい。)
定期保険全体で、事業費を賄えれば良い、という戦略。

A定期保険商品で、新規保険加入世代である20歳代〜30歳代をメインターゲットにしつつも、
全世代から平均的に儲けよう。
定期保険全体で、事業費を賄えれば良い、という戦略。

B特定の商品で、全世代にインパクトのある安い保険料を提供しよう。
その商品では、十分に事業費を賄えなくても良い。
このことにより、会社の知名度を上げ、他の商品でガッポリ儲けよう。
自社が扱っている商品全体で、必要な事業費を賄えれば良い、という戦略。

@であれば、保険料比例方式で付加保険料を計算する定期保険を販売している、ライフネット生命の戦略。
Aであれば、保険金比例方式で付加保険料を計算する定期保険を販売している、多くの生保の戦略。
Bであれば、他社に比べて圧倒的に安価な終身医療保険(メディスマート)を販売していたPCA生命は、この戦略であったのではないかと考えています。

このような戦略の元で付加保険料が決定され、純保険料に上乗せされて、営業保険料になっている、と理解しました。
(Bのような戦略商品を販売する生保は少ないのではないか、という印象を持っています)

坂本さんがお書きになった、『生命保険「入って得する人、損する人」』は読ませていただいていました。
『「生命保険は助け合い」というのは迷信です』と書かれた部分も読みました。
この部分に対して、Dr.KENさんは、「そんなに正直に書いてしまってよいの?」という感想を述べていました。
保険営業員の多くも、『「生命保険は助け合い」というのは迷信です』ということを知っていながら、顧客に対しては、「愛」だの「助け合い」だのという「迷信」を伝えているのでしょう。
保険商品は、単なる「商売のタネ」に過ぎないのに。

だからこそ、、「愛」だの「助け合い」だのということが「迷信」であることをよりハッキリ消費者にわかってもらうために、保険料内訳の説明に商売用語である「原価」という言葉を使う意味はあると思います。

U.『保険商品ではなぜ「原価」を気にするのか』に対する私の理解

多くの場合、保険商品は、購入代金(保険料)を支払っている長期間にわたり、その効能が実感できない商品です。
効能を実感してしまうときになってはじめて、こんなことのためにあんな大金を支払っていたのか、ということがわかる商品です。
あるいは、効能をまったく実感しないまま、払い終わった後で、こんな大金をつぎ込んできたのかを実感しがちな商品です。

だから、その保障のために支払う保険料は妥当なのかどうかを探る手がかりの一つとして、
原価を知りたい、会社経費部分を知りたい、
のではないでしょうか。

営業保険料ベースであれば、大きな違いは見えないかもしれませんが、付加保険料ベースでは違いが際立ってきます。
当ブログ・付加保険料比較
http://ucosmos.blog95.fc2.com/blog-entry-284.html

保障内容(効能)はほぼ変わらないのに、A社に比べB社の付加保険料が3倍であるとした場合、それに見合う付加価値をB社保険営業員は顧客に提供してくれるのか?
大して役に立たない、あるいは、却って害がある価値を提供してもらうくらいなら、
A社の商品を選ぼう、という判断基準にもなります。

保険営業員のうち、会社や自分の役に立つ営業をしようと考えている営業員は多いでしょうが、顧客の役に立つ営業をしようと考えている営業員はどれほどいるのでしょうか?
自分が購入したいと思う保険商品を、顧客にも販売したいと思う営業員はどれほどいるのでしょう。
顧客のためになる営業(自分が購入したいと思う商品を、顧客にも販売)していたら、自分の生活が成り立たなくなってしまうでしょう。

こんな程度の営業をしてもらうために、その営業コストが付加保険料に含まれているくらいなら、なるべく付加保険料の少ない保険商品を選ぼう、という判断にならないでしょうか。

投稿時間:10/04/21(Wed) 20:49
投稿者名:actuary_math
Eメール:actuary_math@yahoo.co.jp
URL :http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100421
タイトル:Re: 生命保険の原価
はじめまして。

日本アクチュアリー会正会員(損保ですが)で、アクチュアリー試験を主に取り扱ったブログ
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math
を運営しているものです。

坂本さんのお名前は昔から存じ上げており、練習帳でも時折勉強させていただいておりました。

さて今回の件ですが正直坂本さんのPDFのご議論は正にそのとおり考えます。
L社が問題にしている情報の非対称性(保険会社と契約者の)や保険会社の高コスト体質については私も同様の問題意識はもっておりますが、だからといって誤解を招く計数が一人歩きすることは厳につつしむべきだと思っています。
(医療保険についてもいわゆる「粗利益」の部分(しかも責任準備金を考慮しない)を「黒字」と表現している部分があります
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100408

最近Twitterがブームになっており、自分も活用していますが、特にTwitterでは字数が140字と短いため、短い表現がより誤解を招きやすい危険性をはらんでおり自分も含めて大いに注意したいところです。

坂本さんのPDFとDr.KENさんの一連の投稿にはリンクを張らせていただきました。(Dr.KENさんはおなじ「はてなダイアリー」なので自動的にTBになっているはずです)

ご挨拶が遅れましたが坂本さんのアクチュアリー試験生保数理のPDF群も大いに期待しております。

これからもよろしくお願いいたします。

投稿時間:10/04/26(Mon) 16:48
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:Re^2: 生命保険の原価
actuary_mathさん、
コメントありがとうございます。

御礼が遅れましたが喜んでいただいて何よりです。

> ご挨拶が遅れましたが坂本さんのアクチュアリー試験生保数理のPDF群も大いに期待しております。

これは生命保険数学入門
http://www.acalax.info/actmath/
のことだと思います。
ようやく『金利計算』と『死亡率』が終わりました。
次に『死亡率込みのキャッシュフロー』が終わったらいよいよ『保険料の計算』になる予定です。
こちらのほうもコメントよろしくお願いいたします。

坂本嘉輝(AcaLax)

投稿時間:10/04/20(Tue) 23:05
投稿者名:Dr.KEN
Eメール:rocohouse@mqb.biglobe.ne.jp
URL :http://d.hatena.ne.jp/rocohouse/
タイトル:Re: 生命保険の原価
10年ほど前にコノ掲示板でいろいろとお騒がせ致しました(^_^;)
”征保大将軍”あらため今はネット上では”Dr.KEN”を名乗らせて頂だいている
TN社の代理店を営んでおります角倉です。

今回は坂本さんにこのようなレポートを書かせてしまい恐縮していますが
皆様のご意見も是非お聞きかせ頂きたいと思っています。

私のブログの今回のテーマ
【保険の原価】を最下段の<次の日>をクリックしながら、
http://d.hatena.ne.jp/rocohouse/20100405
ご覧頂ければ流れもお判り頂けるかもしれません。

よろしくお願いもうしあげます。

投稿時間:10/04/26(Mon) 16:56
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:Re^2: 生命保険の原価
KENさん、何とか宿題をこなしました。
じっくり読んでまたコメントお願いします。

おかげさまでこの『生命保険の原価』を書きながらいい勉強ができました。

ほかの生命保険に関心のある人々も喜んでくれるとうれしいのですが。

投稿時間:10/04/28(Wed) 01:35
投稿者名:Dr.KEN
Eメール:rocohouse@mqb.biglobe.ne.jp
URL :http://d.hatena.ne.jp/rocohouse/
タイトル:Re^3: 生命保険の原価
坂本さん 
本当のありがとうございました、
そしてご苦労さまでございました(^_^;)

長年の謎が解けてきたような気がします、
今回はこのようなブログを書きましたが
http://d.hatena.ne.jp/rocohouse/20100428

だから何が問題なのか?
というところまでいかないとなりませんね(^_^;)

私のブログのコメント欄にactuary_mathさんより
こんなリンクを貼って紹介して頂きました、
私のブログのコメント欄では注目度は薄いので(^_^;)
http://iwk.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-2ca9.html

投稿時間:10/05/04(Tue) 13:02
投稿者名:現役保険営業マン
Eメール:
URL :http://hoken-ag-diary.at.webry.info/
タイトル:Re^4: 生命保険の原価
はじめまして。
現役保険営業マンと申します。Dr.KEN氏のBlog経由で参りました。

坂本様がまとめられた「生命保険の原価」を先ほど拝見いたしました。「純保険料=生命保険の原価」という証明なき図式が独り歩きしていると考えていた私にとっては、分りやすくほっとできる内容でした。

早速ダウンロードして保管いたしました。このような貴重なことを公開してくださり大変感謝しております。本当にありがとうございます。



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